終身保険の受取人を孫にする際の注意ポイント
終身保険に加入する際に、誰を受取人にするかはとても重要なポイントになります。
誰が受取人かによって、税金のかかり方が変わってくるからです。
終身保険を選ぶ人は、自分に万が一のことがあったときに大事な家族が困らないようにと終身保険を選ぶケースがほとんどです。
しかし、大事な家族であっても、受取人に選ぶときには注意が必要な間柄もあります。
その代表格が孫です。祖父母にとって孫はとてもかわいい存在ですから、孫に財産を残したいと考える人も少なくありません。
そこで、この記事では、終身保険の受取人を孫にする際に注意したポイントを解説します。
【目次】
- 終身保険の受取人が孫だと非課税枠対象外!?
- 孫に資産を残すなら生前贈与を!
- 祖父母からの贈与金を終身保険で活用する方法
- 贈与資金を終身保険で活用する際の注意ポイント
- 受取人を孫にするには法定相続人かどうかが鍵
終身保険の受取人が孫だと非課税枠対象外!?
終身保険に加入する前に知っておきたいことがあります。
保険金を受け取るときには税金が課せられるということです。
契約者と被保険者が同じ場合は相続税がかかります。
一方、契約者と受取人が同じで、被保険者だけが違う場合は所得税が、契約者と被保険者、受取人がすべて違うときは贈与税がかかるということは最低限知っていなければなりません。
そして、受取人が法定相続人である場合は相続税の非課税枠が適用されることも知っておくべきポイントです。
受取人が法定相続人の場合には、法定相続人1人に対して500万円の非課税枠が使用できます。
ですから、仮に被保険者が夫で受取人が妻、法定相続人が妻と子ども1人の場合なら、
500万円×法定相続人2人=1,000万円までが非課税枠になります。
しかし、法定相続人ではない孫が死亡保険金を受け取ると非課税枠は適用されません。
保険金が5,000万円だとすると、
妻が受取人の場合は
5,000万円-1,000万円=4,000万円に相続税率20%がかかるので、相続税額は800万円です。
それに対して、
孫が受取人の場合は、
5,000万円の20%ですから1,000万円の相続税がかかる計算になります。
孫に資産を残すなら生前贈与を!
孫に資産を残したいなら、終身保険の受取人にするよりも節税になる方法があります。
生前贈与の活用です。年間110万円以下の生前贈与なら贈与税の基礎控除が適用されます。
ただし、非課税枠ぎりぎりの贈与を繰り返して行うと、いざ相続が発生したときに調べられ、一括の贈与金額を分割して実行したものとみなされてしまうケースがあります。
そうなると、後で贈与税を課税されてしまうので、110万円を上回る金額の贈与を行い、毎年贈与税を少しずつ納税しておくことがおすすめです。
そうすれば、贈与を行っていた事実が公に認められることになります。
さらに、確実に生前贈与と認められるには、贈与契約書を作成し、贈与を受けた孫が通帳と印鑑の管理を自分ですることが大事です。
通帳や印鑑の管理を祖父母がしたまま通帳名義だけを孫にしていると、相続財産とみなされてしまいます。
生前贈与は贈与契約書の作成と通帳印鑑の管理の2点を守って行いましょう。
祖父母からの贈与金を終身保険で活用する方法
祖父母から贈与された資金を終身保険で活用する方法もあります。
受贈者の孫を契約者と受取人に、孫の父を被保険者にした終身保険に加入する方法です。
こうすることで、贈与者の祖父母が亡くなっても保険金の支払いはないので、相続税が発生しません。
また、生前贈与は、相続発生から3年以内の贈与に関しては相続財産に含まれるという規定がありますが、その対策としても有効です。
祖父母から孫へのとばし贈与では、孫が法定相続人でないため、贈与した財産は祖父母が亡くなった時点の相続財産の中には含まれません。
また、終身保険を活用すると、祖父母が亡くなった時点では孫に資産は入らず、孫の父が亡くなったときに初めて孫のお金になります。
この場合、契約者が孫自身なので、保険金は一時所得となり、相続税ではなく所得税の対象となります。
負担した保険料と特別控除50万円を差し引いた金額の1/2が課税対象となるので、通常の相続税よりも税金が抑えられる点もおすすめです。
贈与資金を終身保険で活用する際の注意ポイント
終身保険は保険料を一時払いすると貯蓄性が高まります。
しかし、贈与するお金で前出の終身保険の保険料を一時払いしてしまうと、保険金を受け取った時点で贈与税の課税対象となってしまうので注意が必要です。
あくまでも保険料の支払いをするのは孫自身であることが大事なポイントになります。
また、孫の父がすでに亡くなっている場合は要注意です。
孫は祖父母の代襲相続者になります。
そのため、3年以内の贈与金も相続財産に含まれてしまうので、相続税の対象です。
終身保険を節税対策に役立てるためには、保険の契約者と被保険者、受取人という3者の関係がとても重要な鍵を握ります。
そこに贈与者と受贈者の関係が加わるため、贈与資金を終身保険で活用する方法は、とても複雑な関係性のなかで成り立っていることを理解しましょう。
正しく理解できないまま加入してしまうと、かえって余分な税金を支払うことにもなりかねません。
しかし、注意のポイントは保険料を一時払いしないことと、祖父母と孫が代襲相続になる関係ではないことの2点だけです。
その2点さえクリアしていれば、とても有効な節税方法と言えます。
受取人を孫にするには法定相続人かどうかが鍵
終身保険の受取人を孫にする場合は、まず孫が法定相続人になっているかどうかという点を必ず確認するというのが大事なポイントです。
法定相続人になっている場合は、祖父母が亡くなった時点で代襲相続が発生し、相続税の対象になってしまいます。
もし、法定相続人でないことが明らかな場合には、基礎控除を上回る金額の贈与を行い、毎年贈与税を収めて生前贈与を行うというのもひとつの相続対策です。
また、契約者や被保険者を工夫して終身保険をかけることによって、相続税や贈与税ではなく、所得税の課税対象にするという方法もあります。
どのような形で保険料を支払ったり、保険金を受け取ったりするとどのような税金がかかるのかということをしっかり理解したうえで、方法を選ぶことが重要です。
同じ金額を孫に渡したい場合でも、方法によって渡せる金額が大きく違ってきます。
せっかく渡すのであれば、できるだけ多く渡せるように工夫しましょう。
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