定年退職時に行う生命保険の見直しポイント
日本では60~65歳になると、定年退職を迎えます。
定年退職は第二の人生の始まりともいえるライフイベントで、生命保険の見直しをするタイミングでもあります。
子どもの養育をしていた若い頃と違い、定年退職の世代にはそれにふさわしい保険の見直し方があります。
そこで今回は、定年退職後の一般的な人生設計も踏まえて、生命保険の見直しに関する考え方を解説していきます。
老後を安心して送れるように、しっかり知識を身につけていきましょう。
【目次】
- 老後の生命保険の必要保障額の考え方
- 社会保障制度の保障範囲を理解する
- 定年退職後の死亡保障について見直しする
- 逆にがんなどの疾病に関する保険への加入を検討する
- 定年退職後は誰と暮らすかが重要!生活にあった保険の見直しを
老後の生命保険の必要保障額の考え方
定年退職を迎える60代以降は、住宅ローンの支払いや子どもにかかる養育・教育費の負担がなくなります。
子どもが自立しているので高額な死亡保障も必要のない年代です。
老後の生活で重要なのは、貯蓄や資産がどのくらいあるのか、老後の収入源はどのくらいあるのかです。
老後の主な収入は年金ですが、年金だけで十分暮らしていけるのか、定年後も働きに出るのかによって、これからの生活にかけられる金額は大きく変わります。
そのうえで、残された家族にどれだけのお金を残すべきかを考慮し、必要な保障額を算出していきましょう。
定年退職後に手厚い死亡保障は必要ないことから、これまでの保険を解約する人がいます。
しかし、せっかく入っていた保険を、何も考えずに解約するのは危険です。
特に貯蓄型死亡保険に加入していた人は、保険の予定利率がどのくらいかを確認してから解約するようにしてください。
終身保険に定期保険特約を付加している場合は、定期保険特約だけを解約して、終身保険だけ継続するのもひとつの方法です。
定期付終身保険は終身保障の内容が不十分なケースもあるので、必要があれば終身部分のみを手厚くすることも可能です。
死亡保障に関しては、自分が死亡した場合にパートナーに十分なお金を残せるかも考慮して、保険を検討していきましょう。
社会保障制度の保障範囲を理解する
定年退職後は国の社会保障制度に頼る機会が多くなりますので、その保障範囲をしっかり理解しておくようにしましょう。
必ずチェックしておきたいのは、健康保険や年金、高額療養費制度についてです。
会社員が退職をすると、加入する健康保険の種類が変わります。
一般的には、市区町村の国民健康保険に加入するケースがほとんど。
国民健康保険は前年度の収入に応じて保険料が決まりますので、定年退職前の所得が高かった人は、国民健康保険に加入して1年目は保険料が高くなります。
次に、年金に関してです。60歳で定年しても、年金を受給できるのは65歳からです。
もし、再就職するなら新しい事業者の厚生年金に加入し、就職をしないのであれば国民年金の第1号被保険者となります。
20歳から60歳まで、40年間年金を納付し続けた場合の老齢基礎年金は、平成29年4月からの場合、年額で779,300円になります。
保険と年金以外に、60歳以降はがんや脳卒中など病気になるリスクが上がることから、高額療養費制度についても確認しておきましょう。
高額療養費制度とは、医療機関での支払いが上限を超えた場合に、超えた分を支給してくれる制度です。
上限額は所得や年齢によって異なりますが、たとえば100万円の医療費でも、自己負担が8万円、高額療養費制度で20万円、残りが健康保険で賄えるので、病気をしたときはかなりの助けになります。
定年退職後の死亡保障について見直しする
子どもが自立すれば、子どもの生活費や養育費を心配する必要は基本的にありません。
定年退職後は会社員時代より所得が減少することを考えると、死亡保障は必要最低限に収めたいところです。
たとえば、夫が会社員、妻が専業主婦で、老後が夫婦2人暮らしになる場合、夫婦のどちらかが介護状態になったり、高度障害や死亡したりした場合、残されたパートナーが生活を維持していけるだけのお金を残すことが大切です。
日本消費者協会が2017年に行った第11回「葬儀についてのアンケート調査」報告書によれば、葬儀費用の全国平均は195.7万円とのこと。
また、総務省の平成28年の家計調査年報によると、無職高齢夫婦世帯の老後の支出はひと月平均約27万円とのことでした。
もし、夫が亡くなって妻が独り暮らしになるなら、この金額よりも老後の生活費は少ない金額で済みますし、子どもと同居するならまた状況が変わってきます。
これらのことをあわせて考えると、死亡保障の保険金は葬儀代と当面の生活費で、最低500万円ほどあれば、事足りる計算です。
一方、子どもが複数いる場合は、相続対策のために高額な生命保険をかける場合もあります。
保険をうまく使えば契約者が死亡しても相続税が非課税になるメリットがあります。
逆にがんなどの疾病に関する保険への加入を検討する
死亡保障と違い、老後の生命保険で手厚くしておきたいのが医療保険です。
高齢者がかかりやすい病気は、糖尿病や骨粗鬆症、脳梗塞、肺炎など、さまざまです。
中でも、がんは国民病と呼ばれるほどポピュラーな病気で、高齢者になるほどがんになる確率も上がります。
公益財団法人長寿科学振興財団の調査によれば、2012年にがんで亡くなった人のうち、81.4%が65歳以上であることがわかっています。
また、がんと診断された人のうち、全体の70%が65歳以上の高齢者とのことでした。
これらの病気は闘病生活が長引くことが多く、免疫力の弱った高齢者の場合、重篤な状態に陥りやすいのも特徴のひとつです。
薬代や手術費、入院費、退院後の介護費など、数百万円単位の費用がかかります。
よほど潤沢な資産を持っていない限り、これらの費用をすべて自費で賄うのは不可能に近いでしょう。
生命保険の見直しでは、医療保険にがん特約や三大疾病特約、介護特約をつける、がん保険や介護保険への加入を検討するなどが必要になってきます。
医療保険を手厚くする際のポイントは、貯蓄型ではなく掛け捨て型の終身保険にすること。
掛け捨て型なら貯蓄に回す分の保険料がかからないので、毎月の支払いも安くすることができます。
定年退職後は誰と暮らすかが重要!生活にあった保険の見直しを
定年後の保険の見直しは、
・一緒に暮らすのは誰か
・公的保険制度でどこまでカバーできるか
・老後の収入源はどのくらいあるか
などを考える必要があります。
中でも、同居する家族は大切です。もし、自分が死亡しても家族が困らないだけの蓄えを残せるようにしたら、病気や介護状態になってしまったときのために生命保険で備えましょう。
保険の見直しは、常にライフプランにあった設計をすることが大切です。
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